かごめは、視線の先に見知った男を見つけて迷った。
声を掛けようか、このまま通り過ぎようか。
「お、かごめじゃん。久しぶりだな。」
そしたら、向こうから声を掛けてきた。どうやらかごめに気づいていたらしい。
「MZD・・・・・どうしたのこんな所で?」
かごめはMZDの近くまで歩み寄り、見上げた。
MZDは影に支えられてふわふわと浮かんでいたからだ。
「いや、たまにはポップンパーティー以外の事もしようかなって。」
「そう・・・・・。」
かごめは首をかしげたが、別にそれについては聞かなかった。
「かごめこそ、こんな所でどうしたんだよ?」
ここは、生気のない町だった。
もう少し先に行くと、廃墟のような場所がある。
普通の女の子なら、あまり好んで近付かないような。
「青い鳥を探してるのよ。
・・・この辺はまだ探したことがないから。」
「ふーん。相変わらずだな。」
MZDはそっけなくそう言って、かごめが手に提げている空っぽの篭を見た。
その篭はもう長い間空のままだということをMZDは知っている。
「・・・相変わらずなのはあなたも同じだと思うわ。」
「はは、そうかもな。」
MZDが軽く笑うと、かごめも少しだけ表情を緩めた。
最近かごめは以前よりも表情を変えるようになった気がする。
・・・・・これも彼のおかげか。MZDは思った。
「それじゃあ・・・私はもう行くわ。」
かごめはそう言ってMZDをもう一度見上げた。
「・・・・そういえば」
MZDは、ふと思いついたようにかごめを見下ろして呟いた。
「向こうの廃墟。さっき見たらやたらと鳥が集まってたぜ。」
行ってみたらどうだ?とは言わなかった。
言わなくてもかごめはきっと行くだろう。
「そう・・・・・・またね。」
かごめはそれだけ言うと背を向けて歩き出した。
MZDは何も言わずにその背中を見送って。
「さあ、どう出るか・・・・。」
ポツリとそう呟いた。

壊れた石垣を乗り越えると、廃墟の中心の広場に確かに鳥がたくさん集まっていた。
その真ん中に、袋を抱えた一人の少年。
かごめはその見覚えのある少年の背中に呼びかけた。
「ジャック。」
その声に、ジャックはびっくりしたように振り返る。
「・・・かごめ?どうしたんだよ、こんな所まで来て。」
「青い鳥を探してたら、MZDがここに鳥がたくさんいるって教えてくれたから。」
「・・・そうか。でもここに青い鳥はいねえぞ。」
ジャックはあたりを見渡してから言った。
「・・・・そうみたいね。」
かごめは別にがっかりした様子もなく言う。
「とにかく・・・・こっち来いよ。」
「ええ。」
かごめは、ジャックの方まで危なっかしく歩き出した。
ここは廃墟だ。崩れた瓦礫があちらこちらにせり出していて、歩きづらい。
長いスカートがさらに歩きづらそうだった。
ジャックは見かねてひょい、と軽く瓦礫を飛び越えてかごめに駆け寄った。
歩き慣れているからジャックは転ぶ様子もない。
「手、かせよ。」
かごめに、ぶっきろぼうに手を差し出して。
目を合わせようとしないジャックにかごめは少し笑った。
「ありがとう。」
手を重ねると、ジャックはさらにそっけなく「転ぶなよ。」とだけ言った。
2人が通っても鳥は逃げるわけでもなく日向ぼっこをしている。
ジャックに手をひかれてかごめは広場の端にたどり着いた。
2人で、瓦礫の上に腰を下ろして。
かごめは、ふとジャックが持っている袋に目を留めた。
「それ・・・・・」
「これか?パンくずだ。」
「鳥に・・・・餌、あげてたの?」
かごめがそう聞くと、ジャックは恥ずかしそうに目を伏せた。
「・・・ああ。たまに、ここ来るから。」
「・・・そう・・・・。」
ジャックは、おもむろに袋の中に手を入れると、またパンくずをまき始めた。
何羽かの鳥が寄って来て、パンくずをついばみ始める。
かごめはその様子をぼんやり眺めていた。
鳥はたくさんいるけれど、どこを見ても青い鳥はいなかった。
・・・・でも、無駄足だったとは思わない。
だって
「・・・どうしたんだ、かごめ?」
「・・・・・何でもないわ。」
ジャックは袋の底のパンくずを袋を逆さにして落とすと、立ち上がった。
「じゃ、餌も無くなったし帰るか。」
かごめもそれに合わせて立ち上がった。
「かごめは・・・・どうするんだ?
また青い鳥 探しに行くのか?」
ジャックにそう聞かれて、かごめは少し考えた。
「・・・私も、帰るわ。」
「そうか。・・・じゃ、送ってく。」
そう言って、ジャックはまたかごめに手を差し出して。
「ありがとう。」
かごめは、少し笑ってその手を握った。
ジャックはまたそっぽを向いてそっけなく「転ぶなよ」とだけ言った。
鳥は、まだ日向ぼっこをしている。
どこかで、二人を見送るように鳥が小さく鳴いた。


MZDは、さっきの所から少し離れた廃屋の屋根の上で空を見上げていた。
影が小さく何か言って、MZDは楽しそうに笑う。
「さあ、吉と出るか凶と出るか・・・それは俺にもまだ分からないな。」
神は何も導いたりしない、唯いたずらに世界の中に手を浸しかき混ぜてみるだけ。
其処に何が浮かび上がってくるかは神自身にも分からない。
変化を与える行為が仕事なのだと、MZDは呟いた。
あの二人は、似ているようで正反対なあの二人は、影響を与え合うどう変わっていくのか。
これだから世界は面白い。
MZDの言葉に、影が小さく悪趣味だ、みたいなコトを呟いたけど
聞こえないふりをして笑ってMZDはまた空を見上げた。
「明日も晴れるな。」
遠くの方で、一声高く、鳥が鳴くのが聞こえた。





400HITを踏んだりん様へ。
遅くなってすみませんでした。
なんかMZDがお節介やきな上でしゃばっててどうしよう・・・(知るか。
あと、何かよく分からない話でごめんなさい。
こんなのでよければどうぞ貰ってやって下さい。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送