電波の具合が悪いのか、声が良く聞こえない。
しょうがない。今日の交信終わり。
あたしはずきんを脱ぐと空を見上げた。
重たい灰色。雨、降るかな?
でも、今から中に戻る気もしなかった。
あたしは壁にもたれて目を閉じる。
雨が降るまでに眠っておこう。
静かな雨の音で目を覚ますのもいいかもしれない。
けど、あたしはすぐに起こされた。
「何してんだよ。」
声が聞こえる。誰かは大体分かってる。
「風邪、引くつもりか?」
別にうるさくは感じなかったからこのまま寝たフリをていることにした。
気配が、横に移る。あたしの横に腰を下ろしたらしい。
横に座ったきりこいつは何も言わないからちょっと気になって目を開けたら
覗き込んでくる黒い目と目が合った。
不覚だ。こいつは分かってて黙ってたんだ。
切り揃えられた茶色い前髪が得意げに揺れる。
あたしは返す言葉が思いつかなくてでも悔しくて帽子を無造作に引っ張った。
こいつは引っ張られるままにあたしの肩にもたれかかる。
重かったけど面倒だからそのままにしておいた。
ぽつり。
頬に落ちるあめのおと。
思ったより早く降ってきたみたい。
でもあたしもこいつも動かない。
ぽつり、ぽつり、と。
おとに誘われるように目を閉じて。
ふと、あめの中にこのまま溶けてしまえればいいのにと思った。
そしたら電波の具合が悪いことも横にいるこいつのことも全部どうでもよくなるのに。
隣のこいつの顔はよく見えない。
頬に濡れて張りつく髪を払って、ちょっと心を落ち着けて小さく呟く。
あめのおとに紛れて届かなくてもいいと思った。
「デイヴ。」
名前を、呼んだ。
慌てて顔を上げたこいつにあたしは笑いかける代わりに言った。
「なんか話してよ。」
あめのおとに紛れてもいいから。
けど、デイヴは困ったように「嫌だ」と、そっぽを向いてしまった。
あたしもそれ以上は望まずに目を閉じる。
このまま雨に2人で包まれて、今はそれだけで充分だ。
でも明日は、電波の具合が良いといいな。
そしたらもっと素直にこいつと話せると思うから。

本当の気持ちはあめのおとに紛れてあたしにもわからなかった。
でも、いつかは、きっと。
その時の一歩はあたしから踏み出せますように。

あめのおとの中で小さく願う。




デイツラうさ(長。
雨の中にずっと居たら風引くっつの。
にしてもツララはうさお君のどこがいいのやら。
あ、冒頭でツララがかぶってるずきんはウサオずきんね。

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