街を歩いていたら、聞き覚えのある歌声が聞こえてきた。
「・・・あ。」
何ともなしにそっちの方向に目を向けると、
人ごみの向こうに、見慣れた茶色の髪がゆれている。
ギターの音と、メガホンから聞こえる明るい声。
よく見えないけれど、多分彼女は笑顔なんだろう。
「気になるの?あれ、確かハヤトのクラスメイトの子だよね?」
横を歩いていた姉さんに、からかうようにそう言われたので、
オレはあわてて目をそらした。
「別に。それより早く行かないとコンビニ寄れないよ?」
姉さんはウェーブのかかった長い髪をゆらしてうなずいた。
「わかってるわよ。」
そう言って、それ以上Bis子のことには触れなかった。
そういえば、二人で出かけるのって久しぶりね、
最後に出かけたのはいつだっけ あたしが高校生の頃かしら。
姉さんは横でそんなことをしゃべっていたけれど
オレは遠ざかっていく明るい歌声に気をとられてあまり聞いていなかった。
明日学校で会えるとわかっているのに、何故かその声がなごりおしい。
「それで、DTOが・・・・」
話はいつのまにかDTOのことになっていた。
そういえば今日姉さんと映画行くハメになったのも、
DTOが行けなくなったからハヤト代わりに一緒に行かない?と、
一人暮らしの姉さんから電話がかかってきたからで。
そのコトをリュータ先輩に話したら
『ミサキさんと映画に行けるなんてうらやましい』とか何とか言われたけど
別に弟なんだからうれしいことでも何でもない。
そんなことを考えているうちにコンビニに着いた。
姉さんは自分の買うものを探してさっさと奥へ行ってしまう。
オレはぼんやりと手前のお菓子の棚を見ていた。
新製品のチョコレート菓子。色とりどりの棒付きキャンディ。
ふと、目にとまった。
フルーツ味の のどあめ。
そういえば前にBis子、路上ライブの次の日はのどが痛くなる、
でも楽しいからいつもがんばっちゃうんだよね、とか言ってたっけ。
今日も楽しそうな声だったな。
さっき聞こえた歌声が甦る。
気がつくとのどあめを手に取っていた。
レジに並んだら姉さんに「あんた、かぜでも引いたの?」と首をかしげられた。
でもオレは上の空で、耳にはずっとあの歌声が響いている。
Bis子ってレモン味平気だっけ?と買ってしまってから考えたけどわからなかった。


「Bis子。」
「あ、おはよう ハヤト」
ポケットに忍ばせたのどあめが何故か重たい。
「昨日、路上ライブしてたな」
「あ、もしかしてハヤト見てた?」
「ん、ちょっと近く通っただけ。歌ってるのは聞こえたけど。」
「あはは。昨日は結構大声出しちゃってたからな。」
そう言って笑うBis子に、のどあめを差し出した。
「おつかれさま。結構いい歌だったよ。」
「え?くれるの?ありがと。」
のど痛かったから助かるよー。そう言って笑う。
オレは、これからものどあめ持って来ようかなとか思いながら
どういたしまして、とかえした。
耳ではやっぱりあの歌声がリピートしている。

今度曲名も聞いてみようと思ってたのに結局聞けなかった。





書いたの1年以上前だけど今さらUP。
もうミサキハヤト姉弟説は説明するまでもないよね?
ハヤトの一人称は凄く迷います。

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