さっきまであんなに晴れていた空が嘘のようだった。
あたしは作業の手を止め、空を見上げる。
今にも雨が降り出しそうな雰囲気にあたしはため息をついた。
折角、今から新しい飛行タイプの菫12号の模型をテストしようと思ってたのに。
本当にツイてないわ。
雨に降られる前に帰ろうと、仕方なく組み立てたばかりのそれを片付ける。
今日はもう家でゆっくり過ごすか。性に合わないけれど。
そんな事を考えつつあたしは荷物を肩に担いで歩き出した。
もう一度空を見上げる。いつ降ってもおかしくない。
あたしは足を速めた。
傘、持ってくればよかった。
雨に濡れるのは嫌いだ。髪の毛を乾かすのが大変だもの。
家まで後少し、というところまで早足で歩いた。
雨が降る前に家に入れそうだとほっとしたのも束の間。
ポツリ。
頬に大粒の水の感触。
降って来た!あたしは一目散に駆け出した。
ポツリ、ポツリと降っていた雨の感覚がだんだん速くなる。
急いでドアを開け、あたしは玄関に転がり込んだ。
「はー。間一髪、ね・・・」
通り雨だろう。困ったものだ。
勢いはどんどん強くなっていく。
あたしは肩にかけていた荷物が濡れていないのを確かめ、一息ついた。
今から何して過ごそうかしら。
暇なのは、嫌。
TV・・・はこんな時間におもしろいのはやっていないだろう。
そうだ、睦月君の家に遊びに行くのもいいかもしれない。
・・・・あれ?
ふと思い出した。
「睦月君・・・・・。」
そういえば出かける時に会ったのだった。
手にスケッチブックを持っていた。
今から絵を描きに行くと言っていた。
彼の事だ、途中でお昼寝タイムになってしまうのだろうけれど。
どこでも寝れるのは本当に凄いと思う。
まあ、この雨だったらさすがに起きるだろうけど・・・
あ。
もう一度会った時の事を思い返した。
手にはスケッチブック。
傘は、持っていなかった。
雨はまだ、やみそうにもない。
考えるよりも先にあたしは傘立てから傘を2本掴むと、外へ飛び出していた。


「・・・・あれ?スミレちゃん?」
雨の向こうに、見慣れた姿。
パシャ、と彼の足元で水が跳ねた。
「・・・え?睦月君・・・?」
あたしは彼の姿をまじまじと見てしまった。
彼も同じように、きょとんとして私を見ていた。
彼の手には、綺麗な空色の傘。
彼自身がさしているのとは別に、もう一本。
少し弱まった雨の下、同じように傘を二本ずつ持つ二人。
・・・・ああ、そういう事か。
私は思わず吹き出した。
睦月君も状況を理解したらしく、困ったように笑っている。
「変なとこで似てるのね、睦月君とあたし。」
全く同じ事を考え、行動するなんて。
笑っている私に睦月君は少し照れたような笑顔で
「スミレちゃんが濡れてなくて良かった」とだけ言った。


しとしと降る雨の下、二人で歩く。
雨はあんまり好きじゃないけど別に気にしない。
ただ、それぞれ2本もある傘のせいで彼と手を繋げないのは残念だった。


某祭に置いて来た雨ネタ。
どっちにしろ、雨降ってるのに手繋いだら濡れるし。
スミレの家が想像つかないけど一人暮らしなのかな・・・?

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送