「もう、睦月君ったら何処にいるんだろう・・・?」
彼を探すのは、あたしの役目。


学校の帰り道、あたしはいつものように公園に行った。
睦月君は大抵、ここで絵を描いたりしてるから。
日当たりのよい芝生。
楽しそうに遊ぶ小学生。
ベンチで寝てるおじさん。
「いない・・・・。」
でも、あっさりと見つけられない事の方が多かった。
彼の趣味は、散歩とお昼寝。
さらに何処でも寝れちゃう特技の持ち主で。
よく散歩途中に木の上とかでお昼寝しちゃうのをあたしは知っている。
ここに居ないとなると、何処かでお昼寝をしているのだろう。
あたしは公園を後にした。


「あれ、スミレじゃん。おーい!!」
道の向こうの方から女の子の声が聞こえた。
頭の上で一つに束ねた茶色の髪を揺らして、こっちへ走ってくる。
「Bis子!」
Bis子は、持っていたメガホンを肩に掛け直して立ち止まった。
「やっほースミレ。」
「久し振り。
 もしかして、今から路上ライブ?」
「うん。今日は天気いいから。スミレは?」
「あたしは睦月君探してる途中。」
それを聞いて、Bis子はちょっと笑った。
「また?いっつも大変だよね。
 ちゃんと約束して会えばいいのに。」
友達は、いつもあたしにこう言うけれど。
「ううん。別にいいの。」
「ふーん。ま、頑張ってね。」
その時、向こうから帽子をかぶった女の子がギターを下げてぱたぱたと走って来た。
「Bis子、遅れてごめん!」
「いいよ。あたしも来たばっかだし。
 じゃ、そろそろ始めよっか?」
あたしは道の端で準備を始めた2人に言った。
「じゃ、あたしはそろそろ行くわ。
 2人とも、路上ライブ頑張って!」
「うん。またね、スミレ。」
「今度、睦月君と2人で路上ライブ聞きに来てね!」
あたしは2人に手を振ると、また歩き出した。
目指すは、河原。



『ちゃんと約束すればいいのに。』
みんなはそう言うけど。


あたしは、河原まで来た。
堤防沿いの坂道を、ゆっくり上って。


でも、約束なんてする必要ない。

日当たりのよい草むらを、犬を連れた女の人が歩いていく。
あたしは河原の道沿いに生えている木まで歩いた。
自然と、歩調が速くなる。


だって、いつだって、どこで寝てたって

木の影にのぞく、黒いしっぽ。
傍らに置かれたスケッチブック。


あたしは睦月君を見つけられるから。

「見つけた・・・。」
あたしは睦月君の元に走り寄った。
「睦月君。」
彼は、あたしの声に気付いたのかうっすら目を開ける。
「あれ・・・スミレ?
 ・・・おはよう。」
目をこすりながら、いつものようににっこり笑ってくれて。
「おはよう。」
あたしも笑い返して、睦月君の横に座った。
暖かい日ざしが気持ちいい。
いつだったか、睦月君はあたしにこの場所が好きだと言った。
睦月君を見つけられたのは、それを覚えていたのともう一つ。
あたしも好きだから。
君が隣で微笑んでくれた、この場所が。




なんかそれ見つけられた理由になってないよ。

ちなみに初の睦菫小説だったり。

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