サングラス越しに見えたアイツの目は、何だか淋しそうだった。

二人でゲーセンに遊びに行った帰り道。
あたしはサイバーがUFOキャチャーで取った変なぬいぐるみを片手にぶら下げて、
サイバーはあたしの横でぼんやりと空を見上げながら、二人で並んで歩いた。
空を見上げたままサイバーがぽつりと呟く。
「もう暗いな・・・。結構遅くなっちまったか。」
「それはサイバーがこの変なぬいぐるみにやたらとこだわってたからでしょ。」
あたしは改めて変なぬいぐるみを見た。
サイバーはこれをとるために、UFOキャチャーで30分も粘っていた。
よほどこれが好きなのか。あたしはよくわからない。
「なっ・・・。変とか言うな!カッコいーじゃねーか!」
思った通りムキになって反論してくる。
「だってこれ可愛くも何ともないし。」
「だから格好いいんだって!ていうかこれとか言うな!ギャンブラーZだ!」
この変なのはギャンブラーZというのか。
「名前も変ー。」
「うるせー!どうせ、このよさはアゲハにはわかんねーだろうけどさ。」
わからないに決まってるじゃない。
あたしは黙って空を見上げた。
もう暗くなってしまった空にはたくさんの星。
あたしのいた場所。
こんなに綺麗に見えるとは思わなかった。
「なぁ、アゲハ。」
「何?」
気が付くと、サイバーはこっちを見ていた。
サングラスに映るのは、あたしの顔。
そのせいでサイバーの目は見えない。
それがちょっとだけ寂しかったけどサイバーはあたしの顔を映したまま喋る。
「アゲハのいた星ってどのへん?」
どうして空じゃなくて、あたしを映したままそんなことを聞くのだろう。
「あのへんかな。」
あたしは見慣れた配置の星々の一点を指した。
あたしのいたあの辺りは、地球では『白鳥座』と呼ばれているらしい。
全然、鳥になんか見えないのに。
地球人の考えることは分からない。
「そこまで、どれくらいかかるんだ?」
「うーん・・・。あたしの宇宙船で五日くらい?」
「そっか・・・だいぶ遠いな」
「当たり前でしょ。宇宙は広いんだから。」
あたしは、視線を空からサイバーに戻した。
もう、サングラスにはあたしは映っていない。
何だか寂しそうな目が、サングラス越しに見えた。
しばらく続く、沈黙。
地球人の考えることは分からない。
でも、今こいつが考えてること、聞きたいことは分かる気がする。
だって多分、あたしと同じだから。
「ねえ、サイバー・・・。」
聞きたい。
『あたし達、いつまでこうして一緒にいられるの?』
でも、口に出してはいけない気がした。
あたしはいつかあの空に帰らなくてはいけない。
あたしもこいつもそのいつか訪れる未来はちゃんとわかってる。
あえてそのことには触れていないだけ。
だってそんな先のことはあたしにも、きっとこいつにも分からない。
でも、口に出したらさらにはっきりと知ってしまうことになる現実。
そんなもの、知りたくもないから。
聞かないほうがマシでしょ?
「・・・また今度、ゲーセン連れていってね?」
「当たり前じゃねーか!対戦、次こそは勝ってやるからな!」
笑顔で、ちゃんと答えてくれる。
サングラス越しに見える、サイバーの笑顔が好き。
あたしも、笑った。
「どうせまた、あたしが勝つと思うけどね。」
「何だよ!そんなのやってみないと分かんねーだろ!」
手を、繋いで。
二人で笑って。
あたしは空を見上げた。
家まであと少しだ。

もし、いつか終わりが来るとしても、そんなのいつになるか分からない。
なら最後まで手を繋いで笑っていれたら。あたしはそう願った。
こいつもそう願っているかは分からないけどきっと同じだから。


あたしにとって初めて書いた記念すべき(?)カップリング小説。
サイバーの性格が良く分からず、手探りで書いてた記憶が・・・
サイバーがおとなしいのはそのせい。

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