「ちょっとサイバー!」
バタン、と勢いよく戸が開く音に俺は振り返った。
そこには、いつものようにアゲハが仁王立ちしていて。
怒ってる・・・みたいだ。
いつものことだ。
「何だよ。」
俺は仕方なくTVゲームのコントローラーを置く。折角いいところだったのに。
「何だよじゃないわよ!アンタ、あたしのプリン食べたでしょ?!」
そう言ってアゲハは俺の前にずい、とプリンの空容器を突きつけた。
確かに見覚えがあった。
というか、ついさっき冷蔵庫で発見し、おやつに頂いたばかりだった。
「あー。」
アゲハのだったのか。
「やっぱり食べたのね!?サイアク!!
 コレ、ケリーお姉様と二人で半分こして食べようと買ってきたのに・・・!」
アゲハはそう言って俺を睨む。
そんなに楽しみだったのか・・・・。
・・・様子から察するに、プリンが、ではなくてお姉様と半分こ、というのが。
何だか釈然としないなあ・・・・。
けど、今回は勝手に食べた俺の方が明らかに悪い。
けど、此所であっさり謝れる程俺は素直ではなくて。
「食べられたくなかったら名前でも書いとけよ!」
「ちゃんと書いたわよ!」
え?
・・・気付かなかった。
これは俺に勝ち目はない。
というかこれ以上言い返す言葉が思いつかない。
このまま言い争っていても無駄だと思った俺は諦める事に決めた。
謝ろう。早くゲームしたいし。
「アゲハ・・・・」
だが、俺がその続きを口にする前に、アゲハはきっぱりと言い放った。
「同じの買って来なさいよ。」


・・・・・・結局俺はアゲハにケンカで一度も勝てていない気がする。
コンビニからの帰り道、ぼんやりとそんな事を思った。
結局俺はあの後アゲハに言い負かされて、仕方なくプリンを買いに家を出たのだ。
ケンカは数えきれない程しているが、一回も勝てていないというのはどう言う事だろう。
それは俺が口喧嘩に弱いだけなのか、アゲハの口が達者だからなのか。
どちらにせよ、女の子に負けてばかりのヒーローって格好悪いよなあ・・・。
まあ、アゲハは普通の女の子ではないのだけれど。
「アレでもエイリアンなんだよなあ・・・」
何となく呟いて、ため息。
エイリアンに負けっぱなしのヒーロー。尚更悪い気がする。
けど。
別にそれ以上はどうしようとも思わなかった。
アゲハは見た目も、中身も普通の女の子そのもので。
エイリアンだという事を意識しろという方が無理だ、と思う。
だから彼女と騒ぐのが楽しいというのも
負けっぱなしでも別にどうにかしようという気になれないのも、
きっとそのせいだ。
多分。
そう考えて無理矢理自分を納得させた。
「やっぱ俺、ヒーロー失格かもなあ・・・。」
難しい事を考えるのは嫌いだ。

彼女と騒いでいると楽しい、それで十分じゃないか。


「おい!」
俺はドアを開けるなり思わず叫んだ。
さっきまで俺が座っていた場所にはアゲハが居て。
手にはさっきまで俺が握っていたゲームのコントローラー。
TVの画面には、『ステージクリア』の文字。
さっきまで、俺がやっていたゲームの。
アゲハはきょとんとして振り返った。
「何よ?」
「何よって、おい、それ・・・・俺が苦労して攻略してたゲーム!!!
 しかも何勝手にクリアしてんだよ!」
アゲハはまくしたてる俺とTV画面を見比べて 「あー。」と言った。
何かどっかで見たようなやり取りだ。
俺はアゲハを睨んだ。
「まさか、セーブはしてないよな・・・?」
俺の言葉に、アゲハはギクリと肩をこわばらせた。
目が泳いでる。俺は確信した。
「したんだろッ!!」
「あははは・・・・、うん。」
アゲハはそう言った後、一瞬申し訳なさそうな目つきになって 何かを言おうとした、が。
俺はそれに気付く前にさらに叫んでいた。
「うわーーーー!俺の努力の結晶がー!!」
俺の叫びにアゲハはムッとした顔になった。
「何よ!いちいち大袈裟なんだから!それくらいで騒がないでよね!」
「うるさい!お前に他人に先越されてしまったこの悲しみが分かるかーーー!」
「えーわからないわよ!何であんたがこんな簡単なゲームに苦戦してたかなんてね!」
「何ー!?言ったなこの年中水着女!」
「何よこの勘違いグラサン男!」



敵同士だから、なんて
やっぱり俺らには関係ないのかもしれない。




某祭りのSS掲示板に投稿してきたもの。
趣味丸出しなサイアゲ。
ケンカップル最高。
アゲハがサイバー家に同居設定前提で書いてます。

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