日当たりの良いポップンカフェで、いつにもまして俯いてる少女。
目の前のココアを見下ろして、ため息をつく。
風が吹いて黒い髪と胸元の白い花が揺れた。
「かごめちゃん、どうしたの?」
いかにも悩んでます、といった感じのその様子を心配して、
カフェでバイト中だったリエは声をかけた。
「悩みごと?リエで良ければ相談にのるよ。」
「そうそう。溜め込んでるのはよくないよ。」
同じくバイト中のさなえも、かごめの注文したココアを持ってやって来た。
さっきからため息をついているかごめが気になっていたのだ。
かごめはいつもどこか暗い影を背負ってはいるが、
あまりため息はついたりしない。だから心配だった。
かごめはしばらく口を開くのをためらっている様子だったが、
2人の優しい声に押されて、ぽつりとためらいがちに言葉を漏らした。
「・・・・遠いところにいる人に、想いを伝えるにはどうしたらいいのかしら・・・」
・・・瞬間、リエとさなえは固まった。
まさか、こんな悩みだったとは。
これはどう見たって恋の悩みだろう。
しかも。あの、男が苦手で他人にあまり興味を持たないかごめが。
誰かを、好きになったというのか。
びっくりだ。
しかし、相手は誰なのか。
いつも人と距離をおいているかごめが、自分から近づきたいと思うような人。
・・・・・さっぱりわからなかった。
リエとさなえの頭の中をポップンパーティーのメンバー達がくるくる回るが、誰もしっくりこない。
しかし、今のかごめの憂いを帯びた瞳。
かなり悩んでいるのだ。
同じ恋する乙女として、これは全力で協力しないと!
二人はそう結論付けた。
「ね、それなら手紙書いてみたらどうかな?」
さなえはとりあえず無難な案を出してみた。
「そうだね。直接言えないなら手紙しかないでしょ!」
リエもさなえの案に力強く同意する。
かごめは急に目の輝きが変わった二人に戸惑いつつ、首をかしげた。
「手紙・・・・?」
「そう。手紙はいつまでも残るから思い出にもなるよ。」
「それにかごめちゃんは詩人だから素敵な文章がかけると思うし。」
「私に・・・書けるかしら・・・。」
かごめは今まで手紙なんて書いたことがなかった。
だから、手紙を書くなんて考えてもいなかったわけで。
「大丈夫。自分の正直な気持ち、言葉にすればいいだけだから。」
そう言って優しく笑うさなえの言葉に、かごめは決意を固めて頷いた。
「わかったわ。・・・やってみる。」
「よし!そうと決まれば早めに実行しなきゃね。
リエ、この前雑貨屋さんで可愛いレターセット買ったから、分けてあげるよ。」
そう言ってリエはぱたぱたと店の奥へ走って行った。
「それじゃあ、わたしが歌の作詞する時に使うペン、貸してあげるね。」
そう言ってさなえはエプロンのポケットから桜色のペンを取り出した。
すぐにリエは手に花柄のレターセットを持って戻ってくる。
かごめの前に、便せんとペン。
かごめはしばらく躊躇った後、そっとペンをとった。
「それじゃあ、わたし達はバイトに戻るね。」
「かごめちゃん、頑張れ!」
二人の言葉に軽く頷いて、かごめはペンを動かし始めた。






書いたのは大分前だけど放置していたもの。
長かったので3つに話を分けました。
有りがちな展開って結構書くの楽しいですね。
もうわかってるとは思うけど『遠い所にいる人』はジャックです。

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